雨と蓮



蓮にぱらぱらと
降りかかる雨
葉に当たり
水晶のビーズが
零れ落ちたときのような
音がする
かすかな音
かすかな光
ベンチで憩うひとも
蓮を眺め
何事かを思う
かすかな願い
かすかな悔い
蓮に降りかかる雨は
歩むわたしの
肩を濡らす
今日このときの
水の記憶は土に滲み
いつか大河に流れ出て
蓮もわたしも消えた
遠い世界で
再び静かに
誰かの肩と木々の上に
降りかかる
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蓮にぱらぱらと
降りかかる雨
葉に当たり
水晶のビーズが
零れ落ちたときのような
音がする
かすかな音
かすかな光
ベンチで憩うひとも
蓮を眺め
何事かを思う
かすかな願い
かすかな悔い
蓮に降りかかる雨は
歩むわたしの
肩を濡らす
今日このときの
水の記憶は土に滲み
いつか大河に流れ出て
蓮もわたしも消えた
遠い世界で
再び静かに
誰かの肩と木々の上に
降りかかる
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メレンゲの白雪のしたに
あまずっぱいキーライムクリーム
そのしたにほろほろしたパイ
懐かしの1985年
つくば科学万博の年に
読んだ短編小説
その中に出てきたんだっけ?
はじめて食べたのはそれよりさらに後だっけ?
前回食べたのはいったい いつだっけ?
日本のかたすみで
2009年のわたしは
キーライムパイと
ブラックコーヒーの乗った テーブルの前で
遠いフロリダの風景と
遠い1985年の日差しと
キーライムの皮の濃いグリーンを
パイ皮のように折り重ねて 眺めている
どこにでも行ける
どんな夢でも見ることができる
さっき帰路の電車で
すっぱいキーライムパイを
久しぶりに食べたいな と
ふと 思った
この夏のささやかな みどり色の夢
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午後のオフィスで
梅雨が明けたって という声がして
季節の移り変わりを知る
まぶしい光の下で
白鳥が水を浴び
日の丸がはためき
インドの銀行のカウンター前は満員で
道路工事と警備のひとは汗を流し
公園の木陰でいろんなひとがしばし休息する
読みかけの小説の粗筋を追いながら
靴擦れの右足をかばって歩く
歩く
向かいからやってきた見知らぬひとに
じっと顔を覗き込まれる
誰のまぼろしを見ていたんだろう
退屈する暇もない暑さ
夏がするりとやってきて
いつか風とともにまたすり抜ける
いつか何度目の夏 というように
数えるようになるのだろうか
今年の梅雨はただ一度だけの梅雨
今年の夏はただ一度だけの夏
景色に記憶がオーバーラップして
懐かしい面影を幻視したとしても
今このときは 今だけ
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強い風が吹いて
みどりの紫陽花が
体内の奥深く
どこかの臓器の中で
起こっている動きのように
ぐるぐるかき回されている
こうしてみると
あるとき海から上がった人類は
いまも野生とつながって
生きているのだなと知る
朽ちる前でも
わたしも風に
引っかきまわされながら
歩く歩く
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その図書室は確か2階にあって
午後の西日が木の床をあたためる
帰っても階下で両親は仕事をしており
(わたしの実家は自営業)
引っ越した土地には親戚もおらず
友達もまだそんなにできず
小学校の図書館は格好のシェルター
ぺたり と温まった床に座り込み
本の世界に没頭する
そこで手に取った1冊が
アストリッド・リンドグレーン作
大塚勇三訳
岩波少年文庫
名作揃いの岩波少年文庫
リンドグレーンの本は「長くつ下のピッピ」をはじめ
多数ある中で 男兄弟がいるわけでもない
小学2年生のわたしが真っ先になぜこの本を手に取ったのか
それは偶然と言うほかはない
主人公は病弱で台所のソファで寝込むばかりの
ちいさな弟 カール
そして美しく非の打ち所のない兄 ヨナタン
誰からも褒め讃えられる兄と 死の足音を聞きながら
台所のソファで咳き込み 学校にも行けない弟
カールをクッキーと呼び こよなく愛した
美しいヨナタンはほんとうはヨナタン・レヨン
それが ある悲しい出来事のゆえに
レヨンイエッタ と称されるようになるのだが
レヨンイエッタ=ライオンハーテッド
ライオンハーテッド といえば 獅子王リチャードのこと
十字軍を率いた 英国王リチャード1世
その名にちなむように 勇ましくも
年若い兄弟は彼岸の「はるかな国」で
命がけの冒険をすることになります
山を越え 川を越え様々な人々に出会い
裏切りや恐怖と戦いながら それでも
勇敢であろうとする2人
この頃 喘息一歩手前だったので
カールのように咳き込むこともしばしば
家族が寝静まる中 押し殺すように咳をするとき
世界中でひとりきりのような気持ちになる
だからこそ 年がそんなに変わらないカールに
感情移入しながら
わたしもオレンジ色に染まる図書館で
はるかな国を幻視していた
この本は久しく入手できなかったので
探し当ててみつけたときの喜びはひとしおでした
血縁や地縁 絆からはぐれてさまよい
異界をぐぐりぬけて成長していくというストーリーは
童話や児童文学の元型といえるかもしれません
商業地で 人のしがらみの中で暮らしていた
わたしは 授業中に外ばかり眺めては
意識の中ではさすらう夢をみていた
さすらう ということへの偏愛を示すような
この頃の読書傾向を如実に示す
なつかしいまた別の本については また次回。
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東京の残り
残滓のうえに
積み重なった
町をひとが行き交い
昔のひとの残像と
交錯する
残り物だらけの町
太陽も炎も
町のシルエットを
焼き尽くすことはできない
残り物を糧にして
失われたものを語り継いで
ようやくわたしたちは
生きていける
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初夏に咲き誇る
白い花々
少女の揺れるスカートの
裾のレース
ひそやかな恋の記憶を
綴るノートの余白
墓地に降りしきる
粉雪
うなじに光る真珠
真昼の半月
世界を白で覆え
意識すら消え去る
最期の瞬間のように幸せの絶頂の そのときのように
遠い過去 遠い未来の
まだ見ぬ不在の庭で
咲き誇れ
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夏越祓もおわって
旧暦だとまだ だけど
夏がそろそろ やってきます
肩こってるけど
景気微妙(どころじゃないか)だけど
いい季節
いままでも これからも
夏の魔法にかかって
灼熱の日差しの下で 夢を見よう
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