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2009年5月

戒壇巡りのように片手で壁に
そっと触れて よろよろと歩む
ひとりでは歩ききれないかと
思えるほどの深い闇の中を

または 壁は燦々と日の照らす
すでに朽ちた城址のように
そこにあるので ぐるりと巡らされた
灰色の表面に手を触れ
壁の記憶の鼓動を聴く

すべては最初から決まっていたことのようでもあり
すべてはあらかじめ損なわれているようでもあり
時は刻々と失われていくようでもあり
経る月日はそこかしこに留まっているようでもある

笑顔が深い謎を呼び覚ますけれど
それを解こうとするのはもう止めにして
壁の歪み 壁の柔らかな感触を想起し
壁の語りかけてくる静かな声に耳をすませる

わたしのこころに張り巡らされた壁
あなたへ向かう意志を挫くような
あなたのこころの壁

それらを超えたいと願い
手を伸ばし 星を見つめ 夜を走る

超えた先に 何もなくても
求めた軌跡は点々と
モザイクのように残るから
こぼれた記憶をつないで

わたしの生きた よすがとしよう

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