考えごと
ここに座ったからといって
必ずなにかを考えている というわけでもない
それなら車窓の外 風景が流れていくのを眺めたら
なにかを考えつく というわけでもない
あ あの雲 ドーナッツのかたち
というような思念より もっともっと
どうでもいいもの
それこそかたちのないもの
時間も空間も 渾然とした
身も世もないようなことをむしろ
意識の中で追いかけている
影ふみよりも実体のない作業 こころの動き
他者の思念を追う トレースするかたわらで
自分の意識の流れを見失いかける
終わらないダンスのステップのように
そっと暴走する思念を
言葉では掬いあぐねて
キーボードを打ちあぐねて
それではここまで と
目配せをすることもできず
同じ曲が何度も部屋を流れて
よしなしごとばかりに思いをはせて
部屋の外のすこし癇に障る話し声を
聴くともなく聴きながら
日は傾き月は満ち
いつかわたしはあなたのことを忘れてしまうかも
あなたはとうにわたしのことを忘れているかも
あんなに心通った と感じた瞬間があった
そんな気がしたのに それでも
現にこんなにかけ離れているのに 平気で生きている
むかしだったら思うことすら苦しかった
そんなことを 静かに考える
記憶の所在の不確かさ
自由
がんじがらめの 所有に似た愛情
思念のフィールドにモザイクのように散らばっているのを
眺めるとも眺めながら
ふっと届くメールの着信の振動で
また現実世界に引き戻される 宵
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