時間と距離を超えて
遠くの星に住まうひとのことを
思う

そのひとは 月ならぬ月の満ち欠けを眺め
涙をこぼし
コップの水をゆっくりと飲み干し
一日を終えようとしている

生きることを言祝ぐように
丁寧に生きている自由なひと

足元の地球はくるくるまわっている
重力がわたしをここに押しとどめ
粗雑な一日が暮れていく

鮮やかな対比

まるで似ていないのに
誰より懐かしい

遠くで星が流れ落ち
誰かの生命が損なわれ
どこかで産声がひびく

銃声と祝福
潮の満ち引き

闇夜にそっと耳をすます
かのひとの遠くかすかな声

いつしか眠りに落ちてしまい
また朝が来て
いつしか星は見えなくなり

あの遠い懐かしい声を
耳の奥で反芻する

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again and again


波の先を見て
何度も同じ歌を口ずさみ
何度も同じことをきく

どうして
どうして

その先の言葉は飲み込まれる

何手も先を読んで
切り返されそうで
口にしたら
呆れられそうで
目と目を見交わした中に ある
magicが消えそうで

繰り返し見つめてみる

一番遠くて一番わけがわからないひと
思いがけないあたたかさに困惑する
林檎パイにふりかけられた
レッドペッパーのように
微妙なポイントで世界と調和して
居心地悪そうで それでも
あたかもこの空間はきみだけのもののよう

波の先を見て
繰り返し自分に問う

いま何が起こっているの
どうやってここにたどり着いたの

そしてすべては
いったいいつから始まったのだったか

未来のある ポイントで
いつかわたしは答えるのだろうか

確かにあのときだったのです と

繰り返し風に問う

どうして
どうして

その先はかき消えて 残らない

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例えばしあわせについて


考えてみる
好きな香り
好きな音楽
好きな温度につつまれて

それでも遠くを夢見る?

未来から流れてくる時間

因果律を超えて
たどり着ける場所
会えるひと

予知ではなく
リールに巻き取られていくように
逆回転の映像のように

Final Destinationは決まっている

なにをもって自由と名付けるか
神意すらも祈りの力で変えられるなら

わたしは何を願い どこへ行こう
呼ぶ声を聴きとることができますように
かすかな予兆を選びとって
どんな細く曲がりくねった道でも
この両足で 歩んでいけますように

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関わる


第一印象
最初にかわしたことば
後生大事に
いつなんどきでも
だれのときでも
覚えているわけではない

記憶は改竄されねつ造され
そんな言い方をしないまでも
だってすべて不確かだから
わたしの自同律すら
明日の約束すら

気持ちは刻々とうつろい
決して裏切らない なんて
どうして言えるのだろう

それでもひとは今日も誓う
不変を 不滅を

起こってしまった出来事の意味
何故か と問うたとて
答えがそこにあるわけではない

確かなものは何もない
それでも何かを信じている

明日が来なくても
永遠のかけらのようで
微細な 懐かしようであたらしいもの

はかなく消え去りそうな姿を
押しとどめたいと願い
両手のひらでそっと 掬う

ひとことであらわすなら
それはきっと うつくしさ

だから関わってしまったのだろう
うつくしい夕日を見たときに
明日もまた と思うように

うつくしくはかないもの
生あるもの
朽ちてもなお つづくなにか
生成されるなにか

横顔のしずかな線にも
基調音のように
ながれている

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氾濫

おびただしい
音の
ひとの
映像と蛍光灯の

流れさる
意識のかけら
水平方向に
世界は展開し

失われたものは
取り戻され
繰り返し
繰り返し

夢をみて
直感の糸をたどり
際で
ことばを捨てる

ほんとうも
嘘も
超えた極北で

きみの目を見る
そこにあるものは
捉えがたく
そして 掴めない

ただ懐かしさと
特有の温度を
感じるだけ

感じるだけ

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はじまりの場所

はじまりの場所

そもそものはじまりは
何も知らず
小雨の中ここに立った
傍らの知らないひとと ともに


いまわたしは
この場所を
去ろうとしている

快晴の秋の日に
何も持たず

胸に抱くのは
わずかな記憶と
そして 面影

自分の孤独は飼い慣らせるけど
きみの孤独は気にかかる


遠く離れて
たどり着く場所
水が運ぶ記憶

生まれて
いま
ここにいる

風になぶられ
ひとり立ち
遠い消失点を見つめる

終わりはまだ 先だ

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いちばんすきなうた


つい訊くのを忘れてしまったよ
きみのいちばんすきなうた
眠りにつく前に
意識が遠のくあの直前の一瞬に
きみの脳裏ではなにがながれているの

届くようで届かない手
うつむいた横顔
秋の雨がきみの肩を濡らす

ふと顔を上げると きみは
いつしか静かな旋律を追っている
律動と反復 転調して
流れ続け 完璧な空間には
記憶の跡が そっと刻み込まれる

わたしの意識の中で
きみは不思議そうな顔をして
こっちを眺めるともなく眺める

入れ子のよう 合わせ鏡のよう
なにを考えているのだろうかと
心の古層に触れたいと
ためらいながら お互いがお互いを
見つめている

きみのいちばんすきなうた
きみのいちばんすきな季節
きみのいちばんすきな色で
世界を満たしてあげる

蜜のように満ちてしまえば
はじまりもおわりも消えて

そこがきみの生きる世界になる

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愛情の別の顔


好きなのに
大切にできなくて
愛をためして
いちばん好きなひとに
ゆがんだ笑顔を見せる

苦しく澱み痛い愛情

なんのためにうまれてきたの?
と問うことは 無意味?

好きだけど忘れる
好きだけどきみに殉じられない

好きだけど
通り過ぎる季節

こうでなくっては と
縛った瞬間に崩れる愛情

砂のように はかなく
吹きすさぶ風の中 消える

好きだからこそ もっと遠くへ
放物線を描くように
まるごと 放り投げるように
送る愛情

自由なきみを愛している
自由なわたしを愛している

自由の定義はいま必要?
それは明日にすることにして

月が満ちたり欠けたりするように
いつか愛情の別の顔があらわれるまで

今は窓の外の雨音を聴こう
今はあたたかなお茶を飲もう

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鞄ひとつで


海辺を往け
遠くの空を仰ぎ見て
吹き抜ける風に振り向いて

「その先」を見つめる

鞄ひとつで旅立って
素足で そのまま
街を歩く
草を踏みしめ

どこまでも進む

鞄ひとつで
ドアをあけて
まっすぐに光の中へ

どこまでも進め

鞄ひとつで
旅立った先に
なにかが待っている

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消えない夢の背中


いつまでも諦めることのできなかった
ずっと願い続けたことのゆくすえ

ふっと目覚めて 静かに鮮やかに
胸に残る 去ってゆく夢の中の
そのひとの背中

どちらともとれるタイトル
期せずして
どちらも似ているのかもしれない

わたしが見つめ続け
追い続けている背中

消えない限り
いつか叶うように
いつか会えるように

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